1987 年 84 巻 3 号 p. 690-697
昭和54年から昭和61年の間に当教室で経験した肝細胞癌 (HCC) の腹腔内破裂症例20例を臨床的に検討した. 20例中12例は明らかな破裂の誘因もなく発症しているが, 他の8例では上部消化管内視鏡や Adriamycin 動注, 排便などが発症の誘因, または原因となつていた. 初発症状は急激におこる腹痛で, shock となる症例もあり, また筋性防御や麻痺性イレウスを呈する症例も存在した. 止血目的にTAEを5例に施行したが, 長期延命を得た症例と, 肝不全を助長した症例を認めた.