日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
実験的に急性肝不全を誘導したマウスの脾細胞におけるインターリューキン1および2の産生について
筒井 ひろ子溝口 靖紘宮島 慶治阪上 吉秀小林 絢三山本 祐夫森沢 成司
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キーワード: 急性肝不全, 細胞性免疫
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1987 年 84 巻 5 号 p. 1090-1096

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抄録

Propionibacterium acnes (P. acnes) 加熱死菌をマウスに静注し, 一定期間後に少量の lipopolysaccaride (LPS) を投与すると, ほとんどのマウスは24時間以内に死亡し, その肝には広範な壊死巣が, 観察される.
この急性肝不全誘導前後のマウスの細胞性免疫能を, 脾細胞の mitogen 刺激に対する応答を測定することにより検討したところ, P. acnes 静注により免疫能は低下し, 急性肝不全の誘導によりさらに低下することが判明した. 既に報告したように, この免疫能の低下は, 一部, P. acnesあるいはLPSの静注により誘導される suppressor macrophages に起因すると考えられた.
今回は, 細胞性免疫低下の機序を解析するため, マウス脾臓粘着性細胞の interleukin 1 (IL1) 産生能ならびに, 脾細胞の interleukin 2 (IL2) 産生能の変化を測定した. その結果, P. acnes 静注7日後のマウス脾細胞のIL1及びIL2産生能は正常マウスに比して著しい変化は認められなかったが, 急性肝不全誘導により, これら cytokines の産生は著しく低下した. これらの結果から, 本急性肝不全誘導によりもたらされる細胞性免疫能の低下は, 一部IL1及びIL2産生能の低下にも依存するものと推測された.

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