1987 年 84 巻 5 号 p. 1121-1125
健常人にアルギニンを点滴投与し, 尿中への1分間当りのβ2-microglobulin (BMG) と膵分泌性トリプシンインヒビター (PSTI) 排泄量の変化を観察し, PSTIが腎尿細管で再吸収されるのか否かを検討した. PSTIの1分間当りの尿中排泄量はアルギニン投与により, 前値の約5.7倍にまで増加した. BMGの排泄量は最大約450倍にまで増加した. 一方アルギニン投与により血清中では逆にPSTI並びにBMG濃度は減少した. これらの結果は, PSTIはBMGと同様尿細管で再吸収されていることを示しており, その再吸収率は約82%と算出でき, BMGの再吸収率に比較すると少なかつた. 急性膵炎患者における尿中PSTI排泄量の増加は尿細管におけるPSTI再吸収の阻害が加わつた可能性も考えられ, 尿中PSTI値を臨床的に評価する際には尿細管における蛋白再吸収能を考慮する必要がある.