1987 年 84 巻 9 号 p. 1778-1786
正常F 344ラット腸管および1,2-dimethylhydrazine (DMH) 誘発大腸癌における Ulex europaeus agglutinin-1 (UEA1) -binding sites の局在を観察するとともに, DMH投与による粘膜の性状の変化を遠位大腸より経時的に採取した生検組織について検索した. 正常の小腸および近位大腸に常に観察されるUEA1 binding sites は正常の遠位大腸ではほとんど認められず, 癌および腺腫の apical surface や細胞質内粘液様物質に高率に認められた. DMHを投与したラットでは, 腫瘍発現以前に採取した生検組織でもUEA1陽性の杯細胞が頻繁に認められた事実より, UEA1はDMHを投与したF344ラットの遠位大腸に発生する腫瘍およびそのhigh risk mucosa の良いマーカーになると思われた.