日本消化器病学会雑誌
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虚血ウサギ肝のP-31MRスペクトロスコピーによる研究
伴 信之森安 史典玉田 尚川崎 俊彦宋 泰成中村 武史西田 修内野 治人
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1988 年 85 巻 1 号 p. 35-41

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抄録

家兎において, 門脈•肝動脈同時結紮及び解除による肝の虚血時及び血流再開時のエネルギー代謝の変化を, in vivo でP-31磁気共鳴スペクトロスコピーによつて検討した. スペクトロスコピーは, 静磁場強度2.0テスラの全身用MRI装置を用い, 開腹下に表面コイルを肝に装着して行つた.
19分の虚血3例では, 虚血後, 急速なβ-ATPピークの低下, 及び無機リンの上昇を来たし, 19分の虚血後には, 各々20%, 347%になつた. 血流再開25分後でもβ-ATPはコントロール値の77%であり完全な回復はみられず, 無機リンも155%で同様であつた.ホスホモノエステルのピークも虚血後上昇がみられ, 血流再開25分後にはほぼ虚血前のレベルにもどつた. ホスホジエステルは, 虚血時及び血流再開時に軽度の低下が認められるのみであつた.
虚血後のATPの低下は, これまでに報告されている生化学的測定法による値とほぼ同様であつた. 19分の門脈•肝動脈の虚血でも, 血流再開後のATPの完全回復は認められず不可逆的変化が起きると考えられた. 虚血後のホスホモノエステルの増加は, 虚血による嫌気性解糖の亢進を反映していると考えられた.

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