1989 年 86 巻 12 号 p. 2742-2748
各種肝疾患の血清P III P値を測定し, さらにTAEを施行した原発性肝癌を対象とし, TAE前後のP III P値の変動及びゲル濾過法による分画パターンについて検討した. 健常対象者に対し, 肝硬変, 肝硬変合併肝癌ともにP III P値は有意な高値を示したが, 両者間に有意差は認めなかつた. TAE前後において, 有効例では2~4週後にP III P値の低下を認めたが, 無効例では漸増した. これらのことより, P III Pは肝癌に特異的な腫瘍マーカーとはなりえないが, TAEの効果判定の有用な指標になると思われた. ゲル濾過分画パターンの検討では, 有効例にて125I-P III P抗原と一致するピークがTAE後, 著明に低下し, その機序としてTAEによる腫瘍の壊死との関連が推定され, 肝癌組織のP III P産生の可能性が示唆された.