1989 年 86 巻 12 号 p. 2833-2838
肝細胞癌をより早期に効率的に診断すべく多施設アンケートにて症例を集積した. 臨床的因子につき重回帰分析を用い高危険群を設定し, 臨床に応用して有用性及びその限界について検討した. 肝癌合併に有意に寄与する因子は HBs Ag, 年齢, 大酒歴, 性が挙げられた. この結果より1985年4月以降高危険群を中心にスクリーニングを行い28例の3cm以下の肝細胞癌を診断した. 高危険群より発見されたものは24例 (sensitivity 92%, specificity 44%) で, 本方法は肝細胞癌を早期に診断する上で極めて有用であつた. 今回診断し得た症例を検討したところ, 予後は比較的良好で, 予後規定因子として腫瘍自体に基づくものと同程度に肝不全合併の影響が関与していた.