1989 年 86 巻 5 号 p. 1025-1030
245例の症例を用いて Campylobacter pylori (以下CPと略) の検出を行つた. CPは胃内に均一に分布するとは限らず, 2カ所から生検をした症例の21%で一方のみCP陽性であつた. しかし, CPは胃内のどの部位からもほぼ同じ割合で検出された. 男女別にはCPの頻度に有意差はなく, 年齢別では70歳以上の症例で若干検出率が低かつた. 生検部位の内視鏡診断別の検討では正常胃粘膜の62%, 胃潰瘍の87%, 十二指腸潰瘍の60%にCPが見られた. 但し, CPは胃においては癌粘膜や腸上皮化生の部位には殆ど見られず, 十二指腸においては胃上皮化生の部位にのみ見られた. また, CPの検出率にH2ブロッカー投与の有無は影響せず, 潰瘍の初発, 再発, 難治の間に検出率の差は認めなかつた.