1989 年 86 巻 5 号 p. 1089-1095
アルコール性肝障害の重症化の機序における補体系の関与を検討する為, 慢性エタノール摂取ラットにエンドトキシン (0.2mg/100g, 体重; E. Coli 026: B6) を尾静脈より静注し, 16時間後に生化学的, 組織学的な検査をおこなつた. エンドトキシン処置後, 対照群と比較して慢性エタノール摂取ラットでは血中GOT, GPTの著明な上昇とともに広範な肝壊死が出現し, また, 血中BUN, クレアチニンの上昇と腎尿細管の変性を認めた. 一方, 血中補体価 (CH50) は著明に低下し, 肝, 腎の障害の程度と有意の相関を示した. 以上の結果より, エンドトキシンによる補体系の活性化が慢性エタノール摂取後の多臓器障害の発現と関連している可能性が推察された.