1989 年 86 巻 7 号 p. 1513-1518
われわれは膵胆管合流異常を伴つた先天性胆管拡張症の1例において胆汁中膵蛋白分解酵素の存在様式を検討した. PTC穿刺時の吸引胆汁中の蛋白分解酵素は総て活性型であつたが, 48時間自然流出後にPTCD tube より採液した胆汁中の蛋白分解酵素は不活型のみであつた. また, PTCDを clamp する前は総て不活型であつた蛋白分解酵素は, clamp 後の経過時間により活性化率の上昇を認めた. 一方, 不活型蛋白分解酵素を含む胆汁の in vitro の検討では活性型 trypsin は現れなかつた. 先天性胆管拡張症の胆汁中での膵蛋白分解酵素の活性化には, 膵液の胆道内への持続的混入と一定時間の貯留が必要であると考えられた.