日本消化器病学会雑誌
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Print ISSN : 0446-6586
肝疾患における糖鎖抗原CA-50の意義に関する検討
卜部 健
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1990 年 87 巻 12 号 p. 2605-2613

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抄録

糖鎖抗原CA-50の各種肝疾患での上昇機序を解明するため血清学的, 免疫組織学的に病態との関連, および悪性腫瘍におけるCA-50との構造上の異同について検討を行つた. 血清CA-50値は小葉改築を伴う慢性活動性肝炎, 肝硬変, 肝細胞癌で高値を示したが, GPT, γ-GTPとは相関しなかつた. 免疫組織学的には増生細胆管が染色陽性となり, 肝癌細胞は陰性であつた. 血清値と増生細胆管の程度との間には解離が認められたが, 数量化した染色陽性の増生細胆管数とは有意に相関した (r=0.62, p< 0.05). 肝疾患と膵癌症例におけるCA-50の比較ではFPLCシステムによる溶出パターンに明らかな差異はなく, 分子量のピークは共に300万以上であつた. またConA, LCAで認識される糖鎖構造との共存率にも相違は認めなかつた. 以上より肝疾患におけるCA-50は悪性腫瘍で出現するものと構造上の差異は明らかでなく, また肝疾患における上昇は細胆管, 特に胆管細胞由来の細胆管増生に起因すると考えられた.

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