1990 年 87 巻 3 号 p. 745-754
塩酸を用いたラット胃の adaptive cytoprotection (AC) の機序を調べるため, 胃粘膜内 prostaglandin (PG) 量と胃粘膜下血流量の変化を検討した. PGE2とPGF2αは mild irritant (MI) 投与後一過性に増加し次の strong irritant (SI) 投与でさらに増加した. Thromboxane B2 (TXB2) はSI投与後増加しMI前投与はその増加を抑制した. 6-keto-PGF1αとPGD2はSI単独投与でのみ増加した. Indomethacin (IND) 前処置はPGを前値以下に減少させた. 胃粘膜下血流量はMIとSIと投与後一過性に増加しINDはMI投与後の血流増加を遷延させた. 以上の成績から塩酸のACにPGE2とPGF2αの一過性増加が関与するが, PG増加は血流量の増加と関連がないと考えられた.