大腸癌92例を対象に human epidermal growth factor (h-EGF: ヒト上皮増殖因子) の発現について免疫組織化学的に検討した. 早期癌症例ではEGF陽性率28.6%(6/28), 進行癌症例では76.1%(54/71) と進行癌症例で有意に高率であつた. 肉眼型では2•3•4型など浸潤増殖傾向の強いものが, 0•1型などの限局型に比べ陽性率が有意に高かつた. また, 癌表層部に比較して先進浸潤部における腫瘍細胞のEGF発現率•発現量ともに高い傾向がみられた. 腫瘍径も大きな症例で陽性率が高かつた. 組織型では分化型腺癌のEGF陽性率70.2%(52/74) と低分化型腺癌の16.7% (1/6) よりも有意に高かつた. また, 6カ月以内に死亡した予後不良例ではEGF強陽性発現例が多くみられた. 以上より, 大腸癌におけるEGF発現の様相は腫瘍の進行度•深部浸潤傾向•分化度の程度•予後とかなり密接な関係があり, 癌の悪性度を示すひとつの指標になりうると考えられる.