1990 年 87 巻 6 号 p. 1357-1363
ラットの左胃動脈本幹, 左胃動脈後枝, 右胃大網動脈に反復電気刺激を加え, 粘膜微小循環障害に基づく急性胃粘膜病変を作成した. 左胃動脈本幹の還流領域の粘膜血流は, 電気刺激時には正常時の35%以下に減少した. 病変の分布と各支配動脈の還流領域との関係を検討すると, 左胃動脈本幹刺激群, 左胃動脈後枝刺激群, 右胃大網動脈刺激群の病変のそれぞれ85.8%, 84.5%, 53.4%は, 刺激を加えた動脈の平均還流領域内に発生した. 病変のそれぞれ95.4%, 95.3%, 74.1%は当該動脈の最大還流領域内に発生し, また病変の0%, 5.4%, 5.0%が前庭部に認められた. 以上の成績から, 胃体部粘膜病変の大部分は, 微小循環が障害された領域に局在することが示唆された.