日本消化器病学会雑誌
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肝癌の肝動脈塞栓術における動脈血中ケトン体比の臨床的, 実験的検討
山本 亮輔
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1990 年 87 巻 6 号 p. 1401-1409

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抄録

動脈血中ケトン体比 (AKBR) を114例の肝•胆道疾患を対象に測定し次の結果を得た. 健常者のAKBR 1.47±0.38に対し, 肝硬変, 肝細胞癌, アルコール性肝障害, 悪性胆道閉塞では0.7以下であつた. AKBRはアルブミン, コリンエステラーゼとよく相関した. 肝細胞癌患者に対する肝動脈塞栓術 (TAE) 後のAKBRの推移は, ゼラチンスポンジ使用群ではTAE後AKBRは直後に有意の低下を認め, 24時間後には回復した. 一方ゼラチンスポンジを使用しなかつた群では軽度の低下にとどまり24時間後もほとんど不変であつた. またTAE後に予後良好であつたものはAKBRは24時間後前値に回復したのに対し, 予後不良群ではAKBRの進行性の低下が認められた. 実験モデルとして家兎にVX2誘発肝癌を作成しTAEを施行しAKBRの変化を検討した. その結果, 臨床例と同様にTAE後AKBRは低下した, また血中エンドトキシンはAKBRと逆相関の傾向を示した. 以上の結果よりAKBRの測定は原発性肝癌に対するTAEの効果および予後の判定に有用であると思われた.

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