1990 年 87 巻 9 号 p. 1837-1845
慢性肝疾患52例について Thrombin-antithrombin III complex (TAT) と Plasmin-α2plasmin inhibitor complex(PIC)を測定した. 慢性肝疾患のうち肝細胞癌のみで, TATの有意な上昇を認めた. 肝細胞癌では腫瘍径が大きく, 門脈腫瘍塞栓の高度な例ほどTATとPICは高値であつた. 肝動脈塞栓術 (TAE) 前後では, TAE 1日後にTATとPICは共に有意な上昇を示し, 以後経時的に低下し, 4週後には前値に復する傾向を認めた. 高度肝障害例と播種性血管内凝固症候群 (DIC) 例との間で, プロトロンビン時間, FDP, FM test とTATおよびPICに有意差を認めた. 厚生省DIC研究班の診断基準ではDIC 5例中3例しかDICと判定されなかつたが, TATはDIC全例で30ng/ml以上の異常高値を示した.