1991 年 88 巻 11 号 p. 2757-2762
肝細胞癌根治耐術例180例を対象として術前TAEの施行範囲が術後遠隔成績に及ぼす影響につき比較検討した. TAEの施行範囲によりA群: 全肝TAE群(N=52), B群: 部分TAE群(右, 左肝動脈もしくはそれより末梢でのTAE) (N=39) の2群に分類し, C群: 非TAE群 (N=89) と比較した. A, C群の生存率は全く差がなかつたが, B群はC群に比し2年, 6年で有意に良好であつた(P<0.05). TAEによる腫瘍の縮小率でB群はA群に比し有意に良好であり, 娘結節に対する壊死効果もB群で優れていた. さらにTAE後の肝機能に与える影響においてもB群はA群に比しその悪化の程度が低かつた. 以上より術前補助療法としては部分TAEの方が全肝TAEよりも有意義であることが示唆された.