1991 年 88 巻 5 号 p. 1177-1183
大腸癌92例を対象にEGFR (上皮増殖因子受容体) の発現について免疫組織化学的に検討した. EGFR陽性率は15例 (16.3%) で全例が進行癌であつた. 肉眼型では浸潤型 (3•4型) が高率であつた. 腫瘍径では全例2.0cm以上に限られていたが, 大きさと陽性率の相関は認めなかつた. 占拠部位別•stage 別•リンパ節転移の有無•予後からみた陽性率との相関は認めなかつた. 組織型別では粘液癌の2/3が陽性であつたが, 分化度の違いによる陽性率の有意差は認めなかつた. EGF発現との関係をみるとEGFR陽性例は全てEGF陽性を示した. 以上より, 大腸癌におけるEGFR発現は, 腫瘍の増殖•進展における一因子でEGF-EGFR系が関与している可能性が示唆された.