日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
地域国立基幹病院における肝疾患患者の予後
肝臓移植の適応を考慮して
柿添 三郎矢永 勝彦岸川 圭嗣池田 哲夫杉町 圭蔵大岩 久夫朔 元則戸田 武二
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キーワード: 肝臓移植, 適応基準, 肝癌
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1991 年 88 巻 9 号 p. 2107-2112

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抄録

地域国立基幹病院に入院した肝疾患患者に対し, 米国で用いられている肝移植適応基準を用い, 肝移植適応症例の頻度およびその予後を検討した. 1984年1月1日から1986年12月31日までに肝疾患にて入院した成人191人中非肝癌症例131人を上記適応基準を参考にして, I (適応対象群), II (不適応群) に分け, I群に対しA (非禁忌群), B (相対禁忌群), C (絶対禁忌群) と分類すると移植治療の対象となるA, B群は全体の17%を占めた.
1990年4月における予後を見ると, 各群の死亡例は, 各々I群(62%) {A(36%), B(86%), C(100%}, II群 (12%) で, その死因のうち肝不全が占める割合はI群の13例中10例に対しII群では8例中3例であつた.
肝癌症例60例中肝細胞癌57例に対し別に検討したが, 死亡した46例中24例は癌死, また19例は基礎疾患である肝硬変による肝不全あるいは消化管出血が死因であつた.
本適応基準は, 非肝癌症例では本邦においても肝移植適応判定の参考となり得ると考えられ, 地域基幹病院におけるその適応症例数は17%であつた. 肝細胞癌の頻度が高い本邦では今後肝細胞癌に対する肝移植適応基準の作成が必要と考えられる.

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