日本消化器病学会雑誌
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肝疾患における血中トロンボモジュリン(TM)測定の臨床的意義
秋山 建児中村 公英牧野 勲
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1992 年 89 巻 10 号 p. 2559-2567

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抄録

各種肝疾患での血中トロンボモジュリン (TM) をEIA法で測定した. 血中TM値及び異常出現頻度は肝実質障害の重症度が進行するにつれて上昇し, 急性肝不全及び慢性肝不全では特に著しいことを認めた. つまり健常人 (n=58) 15.9±3.5ng/ml, 急性肝炎 (n=16) 23.0±6.5, 慢性活動性肝炎 (n=21) 22.2±6.6, 代償性肝硬変 (n=20) 27.8±10.1, 非代償性肝硬変 (n=14) 47.6±17.5, 代償性肝硬変+原発性肝癌 (n=7) 26.3±7.9, 非代償性肝硬変+原発性肝癌 (n=4) 46.0±11.5, 劇症肝炎 (n=9) 42.0±20.4であつた. 血中TMの上昇は従来の肝機能検査と比較的相関が乏しく, その測定は重症肝障害の新しいマーカーとなりうる. TMのモノクローナル抗体を用いた免疫組織学的検討において, 代償性肝硬変では偽小葉辺縁部や偽小葉周囲結合組織の血管内皮細胞が淡く染色され, 非代償性肝硬変では同部位が強く染色されたことより, 血中TMの上昇には肝組織血管内皮障害や血管新生が関与しているものと推定された.

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