慢性関節リウマチの治療薬である経口金製剤 auranofin (以下AF) を含む電解質溶液でラット空腸を潅流し, 水及び電解質のネットの輸送量と空腸粘膜のNa+, K+-ATPase 活性, c-AMP及びc-GMP濃度について検討した. また小腸単離細胞を用いてfura-2-acetoxyl-methyl ester (fura-2/AM) による細胞内Ca++濃度の変動をも検討した. AFは水及び電解質輸送を有意に減少させたが, その機序として潅流早期には細胞内Ca++濃度の上昇, 潅流後期にはNa+, K+-ATPase 活性低下及びc-AMP濃度上昇が関与していた. したがつてAFによる下痢発現には, 細胞膜ならびに細胞内メディエーターが, 時期を異にして関与していることが明らかになつた.