1992 年 89 巻 3 号 p. 633-638
家族性膵炎の発症に関与する遺伝子を明らかにする目的で, 膵石発症と密接に関与するとされる膵石蛋白 (PSP) 遺伝子異常の有無を, 2家系の家族性膵炎患者において検索した. 最初にサザン法にて患者末梢血白血球DNAから, PSP遺伝子の異常を検討した. さらに Polymerase chain reaction を用い, 患者ゲノムDNAよりPSP遺伝子を増幅後, 直接その塩基配列を決定した. しかしながら, 両家系においてPSP遺伝子に明らかな欠失や, 点変異等の異常を認めなかつた. 抗PSP抗体を用いた患者膵の免疫組織染色にても, 患者膵において, 正常者と同程度のPSP様免疫活性の存在が観察された. 以上により, PSP遺伝子の異常は直接, 家族性膵炎の病因に関与していないように思われた.