アヒルB型肝炎ウイルス (DHBV) キャリアーアヒルにDHBV蛋白と Freund complete adjuvant (FCA) とを持続接種し, アヒルのDHBVに対する免疫能を賦活することで, 活動性のある肝炎の発生が見られた. FCA単独接種では有意に強い炎症所見は見られないが, DHBV蛋白をFCAと混合して腹腔内や肝内に持続接種する事でキャリアーアヒルにのみ, 門脈域の細胞浸潤を特徴とするヒトの慢性活動性肝炎(CAH)様の所見が観察された. 同時に, これらのアヒルでは血中DHBV-DNAの有意な低下も見られた. 肝炎の程度は同蛋白の接種回数を増すほど有意に炎症所見が強くなる傾向が見られたが, 実験アヒル間で個体差が見られた. 同時に行つたアヒルの肝 microsom 分画を含む蛋白溶液の接種実験では肝炎所見の増加はなかつた. 現在まで hepadnavirus とその本来の宿主との系において慢性肝炎をみるモデルは woodchuck 以外には無く, DHBVを用いたCAH様炎症の発生に関する動物実験はヒトの肝炎発症機構の解明に有用であると考えられた.