1993 年 90 巻 3 号 p. 637-646
胃悪性リンパ腫16例について, 生検診断におけるAgNOR染色の有用性を検討した. MALTリンパ腫, 表層型および潰瘍型リンパ腫の病理報告書による生検1回当たりの正診率はそれぞれ7%, 24%および38%, 生検での腫瘍細胞の採取率は, 92%, 69%および88%であった. AgNOR数2.0以上をリンパ腫と仮定すると, 表層型および潰瘍型リンパ腫では生検正診率が69%および88%となり, 腫瘍が採取されていれば診断可能となった. MALTリンパ腫ではAgNOR数の増加が軽微であるため正診率は向上せず, その診断にはT•Bマーカー検索が有用であった. AgNOR数はPCNA陽性率とr=0.776と相関し, リンパ腫の増殖能を反映していた.