日本消化器病学会雑誌
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熱傷ストレスによるラット急性胃粘膜病変に及ぼす閉塞性黄疸の影響
胃粘膜内グリコシダーゼ活性と脂質過酸化反応からの検討
国崎 主税
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1993 年 90 巻 8 号 p. 1652-1661

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抄録

閉塞性黄疸が熱傷負荷によるラットの急性胃粘膜病変にどのような影響を及ぼすかを明らかにするために, 閉塞性黄疸群 (総胆管結紮), 対照群 (単開腹) を作製し検討した. 胃粘膜内の β-N-acetyl-D-glucosaminidase と β-glucuronidase 活性を測定し, Triton Xの添加の有無によりライソゾーム膜の安定性を算出した. 熱傷負荷後は対照群 (n=10), 黄疸群 (n=10) ともにライソゾーム膜の安定性は低下し, 2~3時間後に最低値を示した. 酵素組織学的に検討した胃粘膜内グリコシダーゼは負荷前には被蓋上皮細胞内と副細胞内に赤褐色顆粒として認められ, 負荷後には細胞内にびまん性に認められた. 黄疸群 (n=20) ではびまん性の染色性がより増強された. 胃粘膜内脂質過酸化反応産物は, 負荷後30分でピークに達した. 長径と短径の積の和で求めた潰瘍係数は, 3時間以降で黄疸群で対照群に比較し有意に高値であった. 閉塞性黄疸は, 熱傷負荷により惹起されるライソゾーム膜の安定性低下に伴う胃粘膜内グリコシダーゼ酵素活性の上昇を惹起する可能性が示唆された.

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