日本消化器病学会雑誌
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表面型大腸腫瘍の肉眼形態と細胞動態に関する研究
渡 二郎横田 欽一
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1994 年 91 巻 11 号 p. 2040-2048

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抄録

表面型大腸腫瘍の肉眼形態の違いと腫瘍の発育様式との関係を知るため,表面隆起型42病変といわゆる表面陥凹型42病変を用いて,腫瘍細胞の粘膜内全層性発育率(全層率)およびKi-67染色による増殖細胞の分布を検討した.表面陥凹型は辺縁隆起の性状と中心陥凹の程度によりDep(A)型,Dep(B)型,Dep(C)型に分けた.全層率は,腺腫では辺縁隆起が目立たなくなるに従い,中心陥凹が広く明瞭になるに従い,すなわち表面隆起型<Dep(A)型<Dep(C)型の順に増加した(p<0.05)が,癌ではどの肉眼型でも高かった.Ki-67陽性率は,組織異型度が高くなるに従い増加したが,高度異型腺腫と癌の間には差がなかった.Ki-67陽性細胞の分布は,腺腫,癌ともに表面隆起型とDep(A)型では粘膜表層部により多いのに対して(p<0.05,p<0.01),Dep(C)型では粘膜全層に広く分布し,かつ,growth fractionも拡大していた.したがって,Dep(C)型は表面隆起型とDep(A)型に比べて全層率が高いこと,および増殖細胞動態の関係から,粘膜下浸潤を来す機会が多いものと考えられる.

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