日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
内視鏡的食道静脈瘤硬化療法における肝機能悪化の指標
―ΔTBの意義―
松本 裕子鈴木 文孝早田 謙一北原 大文小林 良正次木 稔河崎 恒久中尾 國明松本 正廣岩田 滉一郎金井 弘一
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1994 年 91 巻 11 号 p. 2049-2055

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抄録

食道静脈瘤に対する内視鏡的硬化療法(EIS)において,5%エタノールアミンオレイトの静脈瘤内注入量が少量(6ml以下)の場合の肝機能の変化を50例の肝硬変患者で検討した.肝機能悪化の指標としてΔTB(ElS後15時間目のT.Bil-EIS直後のT.Bill正常域<0.1)を設定した.肝予備能別検討ではChild-Pugh A群(n=25)のΔTBは0.04±0.30で,B群(n=19)0.23±0.41,C群(n=6).54±0.21と術前の肝予備能が不良なほどΔTBは有意に高値となった.また,EIS全過程前後で肝機能(T.Bil,PT,ICG)が悪化した群のΔTBは高値を示し,EISによる肝機能悪化を早期に診断する指標と考えられた.さらに肝不全で死亡した12例の生存期間とΔTBは有意に相関し,5年以上の生存例20例のΔTBは0.04±0.32と低値で,ΔTBは長期予後をも反映すると思われた.

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