1994 年 91 巻 12 号 p. 2193-2201
経口摂取された糖質が小腸で吸収されずに遠位回腸に到達した場合,胃排出時間,小腸通過時間および膵外分泌機能に及ぼす影響について,グルコースとスターチをそれぞれ単独でイヌの遠位回腸に注入することにより比較検討した.その結果,グルコースとスターチのいずれの場合も胃排出時間と小腸通過時間が延長した.この効果はスターチよりグルコースで有意に強かった.また,スターチを遠位回腸に注入するとアミラーゼ分泌量が増加したが,グルコースはアミラーゼ分泌量に影響を及ぼさなかった.以上の成績より,糖質が遠位回腸に存在する場合に生ずる上部消化管運動の抑制と膵外分泌機能の亢進が,同一の機序によって起こる可能性は低いと考えられた.