ラットの下部十二指腸および前胃部の結紮により,24時間後に逆流性食道炎の作製に初めて成功した.肉眼所見ではびらんおよび食道壁の肥厚がみられた.組織所見では早期に重層上皮の菲薄化,乳頭の延長がみられ,24時間後に重層上皮の脱落,粘膜筋板の離開および粘膜固有層を中心に食道組織の広範囲に炎症性細胞浸潤がみられ,粘膜下層の浮腫を顕著に認めた.食道壁の肥厚は粘膜下の著しい炎症性変化によると考えられた.一方,下部十二指腸結紮では食道炎の発生は認めなかった.本モデルでは胆汁酸の逆流を認め,貯留胃内容の総酸度は低値であり,胃液および十二指腸液の逆流が関与する食道炎の病態生理の検討に有用と考えられた.