1994 年 91 巻 5 号 p. 969-975
胃酸が胃潰瘍再生上皮の進展に及ぼす影響をみる目的で,胃潰瘍28病変に胃内 pH モニタリングを行い,距離計測の可能なステレオ式電子スコープで経過観察した.再生上皮を認めた時点から8週以内の最終観察時までの再生上皮の進展速度を求めた.進展速度はA2~S1期の各期間で差は認められなかった.また,活動期から観察しえた21病変で,進展速度と24時間の pH 3 holding timeにr=0.53,p=0.014,夜間の pH 3 holding timeとの間にr=0.56,p=0.008の有意な正の相関が認められた.再生上皮の進展は胃内 pH によって強く規定されていることが確認され,胃酸分泌抑制剤の治癒促進の機序の1つは,胃内を低酸状態にする結果,再生上皮の進展が促進されるためと考えられた.