1994 年 91 巻 8 号 p. 1290-1300
臨床的に肝硬変と診断した慢性肝障害患者272例(男167例,女105例)について,定期的に血清AFP値の測定と超音波検査を施行し,経過観察を行った.観察期間中(1985.1~1992.9)にみられた肝細胞癌は78例であり,累積での肝細胞癌発現率は1年平均で約7%であった.検出時の腫瘍径は37.2%が腫瘍径15mm以下,89.7%が30mm以下であった.定期的経過観察にもかかわらず,検出時の腫瘍径が大きかった理由として,腫瘍の存在部位や肝実質エコーの粗さが一因と考えられた.
各臨床所見から肝細胞癌発現の予知因子についてCoxの比例ハザードモデルを用いた多変量解析を行い検討すると,AFPの経過,肝実質エコー,超音波像による肝内非悪性小腫瘤性病変が予知因子として重要であった.