日本消化器病学会雑誌
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主要門脈枝に腫瘍栓を伴わない結節型肝細胞癌に対するdibutyryl adenosine 3',5'-monophosphateとmitomycin Cの併用動注療法 ―TAE例との対比検討―
杉本 政直
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1994 年 91 巻 8 号 p. 1309-1319

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抄録

腫瘍栓を伴わない結節型の肝細胞癌13例にdibutyryl adenosine 3',5'-monophosphate(DBcAMP)とmitomycin C(MMC)の併用動注療法を行い,TAEを施行した62例と比較検討した.50%生存月数は併用動注療法群,TAE群ともに21カ月であったが,腫瘍型別にみると併用動注療法群では単結節型(6例)が14カ月,多結節型(7例)が21カ月,TAE群では単結節型(25例)が30カ月,多結節型(37例)が20カ月であった.治療後1年以内の死亡例は併用動注療法群が多結節型の1例(7.7%),TAE群が16例(25.8%)で,うち15例が多結節型であった.治療前,両群間に腫瘍の大きさ,Child分類による一般状態の評価に差は認められなかった.以上より,腫瘍栓を伴わない多結節型の肝細胞癌に対し,非侵襲的治療であるDBcAMPとMMCを併用した動注療法の可能性が示唆された.

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