日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
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ヒト胃低分化型粘液癌培養細胞株の樹立とその病理組織学的検討
上杉 秀永中 英男
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1995 年 92 巻 1 号 p. 19-25

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抄録

52歳,男性の胃癌患者の腸間膜播種性転移巣から得られた腫瘍細胞より,ヒト胃癌培養細胞株(KE-97)の樹立に成功した.この胃癌は病理組織学的には粘液癌で,一部に低分化腺癌および印環細胞癌を混在していた.腫瘍細胞は,塊状に癒合し浮遊性増殖形式を呈し,倍加時間は約28.8時間であった.スキッドマウスへの癌細胞移植は,2匹全例に腫瘤形成を認め,組織学的には細胞質に粘液空胞が認められた.免疫組織染色では,抗CEA抗体,抗CA19-9抗体,抗ICAM-1抗体に陽性であった.この胃癌症例の剖検所見は,血行性転移(肺,肝)と癌性腹膜炎を広範に認めた.KE-97は粘液癌で,その癌転移機構と細胞学的特性を検索するうえで有用な細胞株と考え報告した.

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