1995 年 92 巻 1 号 p. 62-71
1年間以上ウルソデオキシコール酸(UDCA)を投与した慢性肝炎患者31例において,肝機能改善効果を有効群と無効群に分け,retrospectiveに検討するとともに,血中胆汁酸分画における影響を比較検討した.無効群16例はB,C型ウイルス肝炎症例であったが,有効群15例中7例はB,Cウイルスマーカーが陰性で自己免疫性肝炎と考えられた.これらの症例は肝機能の著明な改善を認め,7例中5例で抗核抗体の低下を,4例中2例で抗平滑筋抗体の陰性化を認めた.UDCA投与前のHAIscoreは有効群,無効群で差は認められなかったが,投与後有効群では小葉内肝細胞壊死像の改善を認めた.UDCA投与後の血中胆汁酸分析では,有効群では総胆汁酸濃度,UDCA濃度は無効群に比べて低値であり,UDCAの異性体であるイソウルソデオキシコール酸の比率が増加していた.今回の検討でUDCAは自己免疫性肝炎においても有用な治療薬となりうることが示唆された.