日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
ウイルス性劇症肝炎の特殊治療法の評価
―厚生省難治性の肝炎研究班資料の多変量解析―
高橋 善弥太
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1995 年 92 巻 1 号 p. 7-18

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抄録

1983~1988年までの全国集計のウイルス性劇症肝炎564例中,性,年齢,感染症,消化管出血,無尿乏尿の出現,基礎疾患の有無および病型の7項目に欠損値のない518例を用いて,死亡生存の両群で各種治療法(Fischer液,活性炭灌流,血漿交換,グルカゴン・インスリン療法,H2ブロッカー,ステロイド)の使用頻度を2病型別に比較した.危険率10%以下で有意なものは急性型における活性炭灌流(CHP)と亜急性型におけるFischer液(F液)だけで,ともに死亡群に頻度が高かった.有意な予後要因として,性,病型を除く上記5項目を用いて生死判別ロジスチックモデルを作り,それから計算した各症例のリスクスコアにより,スコア0を超える重症群と0以下の軽症群に分け,各治療法施行と生存率の関係を2病型別に比較した.F液使用は亜急性型の重症群の生存率を半減させていた(p<0.05).CHPは軽症群で有害の傾向がみられた(p<0.15).治療施行の有無2群のスコアの平均値に差はなかった.その他の治療法に有意なものはなかった.このモデルにさらに有意な予後因子として,肝性脳症発現日のプロトロンビン%,ビリルビン値,病型を追加したモデルをつくり(有効例数391例),F液とCHPを加えると,いずれも害作用を示した(それぞれp=0.042,p=0.056).このモデルは今後治療法の評価に有用である.Coxの比例ハザードモデルを用いて患者の生存期間に影響する因子を求めると,血漿交換は生存期間を延長していた(p=0.006).

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