日本消化器病学会雑誌
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実験的肝転移モデルにおける組織血流量と5-fluorouracil代謝産物の組織内濃度の相関
酒井 滋山川 達郎加納 宣康上西 紀夫大原 毅
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1995 年 92 巻 7 号 p. 1029-1036

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抄録

ラットを用い実験的肝転移モデルを作製し,水素ガスクリアランス法による組織血流量測定を行い,末梢静脈より投与された5-FU(20mg/kg)とその代謝産物の組織内濃度との相関を検討した.5-FU投与30分後に組織を採取した結果では,コントロール群の正常肝組織と転移群の腫瘍組織で,いずれも組織内F-dMUP濃度と組織血流量との間に負の相関がある可能性が示唆された.これは抗癌剤投与30分後の時点では,組織血流量が抗癌剤の到達性よりも排泄に深く関与しているためと考えられた.時間依存性の抗癌剤である5-FUを組織血流に富む腫瘍に投与する場合は,還流血流による抗癌剤の排泄効果が無視できないため,抗癌剤と腫瘍組織の接触時間を延長させる工夫が必要であると考えられた.

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