1995 年 92 巻 9 号 p. 1266-1274
門脈圧亢進症による上部消化管出血を生じた肝硬変25例に対し経頸静脈的肝内門脈大循環短絡術(TIPS)を行い23例で手技に成功した.門脈圧は51%低下し,緊急止血を目的とした5例では全例止血が可能であった.平均367日の追跡期間中に短絡路狭窄によるshunt dysfunction(SDF)を術後1年目には75%に認めたが,バルン拡張術を行うことにより最終的にはpatencyを1年目85%,2年目73%に保つことができ,術後の再出血率は1年目,2年目ともに13%であった.SDFの発見にはカラードプラ超音波検査が有用であった.TIPSは門脈圧亢進による上部消化管出血の新しい治療法として有用と思われた.