1996 年 93 巻 12 号 p. 893-902
十二指腸潰瘍に伴う胃上皮化生粘膜(胃型上皮)の出現程度は潰瘍の治癒に伴い増加する. H.pyloriの非除菌群では増加した胃型上皮は経過とともに未熟な状態となり, やがて潰瘍の再発へと向かう. 除菌成功群では胃型上皮は高度に発育, 成熟するとともに長期にわたりこの状態を維持し, 潰瘍の再発率が低下する. H.pyloriの除菌により瘢痕部に出現する成熟した胃型上皮は, その後, H.pyloriによる侵襲を受けないため, この状態の持続が可能であり, 酸に対する防御機能を維持するとともに潰瘍の再発が防止されていると考えられる. すなわち,ここに十二指腸潰瘍の自然史が変化する.