1996 年 93 巻 2 号 p. 96-103
門脈-大循環短絡(PSS)による難治性の肝性脳症4例を経験し,1例には従来の方法に準じて経皮経肝的に短絡路閉鎖術を施行し,他の3例には短絡路温存門脈-大循環分流術(以下分流術)を施行した.短絡路を閉鎖した症例は,一時脳症が改善したものの腹水貯留,食道静脈瘤発生を来し,まもなく脳症も再発した.分流術を施行した3例は,治療後直ちに脳症が軽快し,10~31カ月の追跡期間中,腹水,食道静脈瘤や脳症の再発を認めていない.治療前後の門脈圧差は短絡路閉鎖術例では18mmHgであったが,分流術施行例では3mmHgにとどまっていた.分流術は,従来の短絡路閉鎖術に比して,より安全で優れた治療であると考える.