1996 年 93 巻 3 号 p. 167-175
若年の雑種成犬31頭を用いて自家胆汁逆流性膵炎を作製した後,活性酸素阻害剤の1つであるカタラーゼを投与した群(B1群)と非投与群(B2群)に分け,脳組織学的変化を検討した.両群間の比較では生存率において有意差はなかった.脳組織学的検査では1カ月以内は両群とも虚血性変化が強く,特にB2群で著明であった.一方,3カ月,6カ月後ではB2群でsatellitosis,neuronophagiaなど非可逆的変化を認めた.血清過酸化脂質はB1群では有意に低値で,かつ脳組織学的変化も軽微であったことから,カタラーゼによるフリーラジカル発生抑制の効果であると思われた.急性膵炎発症早期からフリーラジカルの発生を阻止することが脳組織の障害の予防になるとの結論を得た.