1997 年 94 巻 9 号 p. 577-584
軽症例の糖尿病患者を対象とし,その胃排出能をacetaminophen法にて,上部消化管通過時間を呼気水素試験にて測定し,糖尿病患者の消化管運動機能を検討した.糖尿病患者では,健常者に比較して,胃排出能の低下,および上部消化管通過時間の延長を認めた.背景因子のうち糖尿病性末梢神経障害合併例の上部消化管通過時間が延長していた.また,HbA1c1C高値群の胃排出能は他の群に比較して亢進し,正常対照群に近かった.糖尿病患者の胃腸症状のうちいくつかは明らかに消化管運動異常に基づいており,無症状の患者も消化管運動異常を認めた.以上より,胃排出能と上部消化管通過時間の測定は軽症糖尿病患者の消化管運動異常をとらえる有用な方法と考えられた.