1998 年 95 巻 10 号 p. 1110-1116
高齢者大腸癌におけるp53蛋白発現の臨床病理学的意義を明らかにすることを目的とした.高齢群におけるp53陽性率は41%,対照群では57%で2群間に有意差がみられた.血行性転移陽性例の頻度は高齢群ではp53陽性例とp53陰性例の間に差がみられなかった(44%vs39%)が,対照群ではp53陽性例のほうが高率であった(70%vs48%).高齢群における予後はp53陽性例とp53陰性例の間で差がなかった(73.3%vs72%)が,対照群ではp53陰性例のほうがp53陽性例より有意に良好であった(68.7%vs51.2%).以上から高齢者大腸癌におけるp53蛋白発現は低率であり,血行性転移や予後におけるp53蛋白発現の意義が低いことが示唆された.