日本消化器病学会雑誌
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MIB-1 LIを用いた,肝細胞癌とその母地肝硬変の細胞増殖能に関する研究
宮川 薫
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1998 年 95 巻 2 号 p. 133-139

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抄録

モノクローナル抗体MIB-1 LIは,すべての細胞増殖期(G1,S,G2,M期)を認識でき,S期のみを認識するBrdU LIと比べて遙かに正確に増殖期細胞の同定が可能でかつ手技操作もBrdU LIより簡単である.このMIB-1 LIを用いてLC,HCC症例の細胞増殖能を測定し,この値とLC,HCC,の病理組織,臨床成績,生存期間との関連性を解明することを目的とした.方法,HCC(ほとんどLCを合併)症例23例を対象とし,肝切除術時に,癌部と非癌部から標本を採取し,MIB-1 LIを測定した.癌部LIは,非癌部LIの約2.5倍の値を示し,細胞増殖能の程度の差を認めた.肝切除術後1年6カ月未満死亡,Edmondson&Steiner分類III度,AFP高値,PT延長などを示した症例では,癌部LIは有意に高値であった,一方,TTT高値,ZTT高値,PT延長などを示した症例では,非癌部LIが,有意に高値であった,MIB-1 LIは,LC,HCCの病態把握や,予後判定に有用であり,細胞増殖能に相関する臨床成績の認識にも役立つと考えられた.

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