1998 年 95 巻 3 号 p. 221-229
大量のrefractory ascitesを有する肝硬変5例を経頸静脈的肝内門脈大循環短絡術(TIPS)により治療した.術前は塩分5g制限下にfurosemide 112mg/日,spironolactone 140mg/日,アルブミン,腹水穿刺などで治療したが改善を認めなかった.TIPS施行後,尿量,尿中Na排泄量は有意に増加し,体重は術前73kgから1カ月後63kgへ減少し,利尿剤の減量が可能であった.退院時,2例では腹水は消失し,3例では少量残存した.退院後4例に短絡路狭窄が生じ腹水は悪化したがバルン拡張術後には改善した.術後2例に肝性脳症を認め1例は治療抵抗性であった.TIPSは短絡路狭窄,肝性脳症の問題があるもののrefractory ascitesの治療に有用と思われた.