1999 年 96 巻 10 号 p. 1159-1164
25歳の男性が心窩部痛を主訴として来院した.腹部CTで上腸間膜静脈血栓症が疑われたので,直ちに腹部血管造影を施行した.上腸間膜静脈から門脈にかけて造影不良で,特に門脈右枝はほとんど造影されなかった.翌日,開腹下に上腸間膜静脈にカテーテルを挿入し,ウロキナーゼの持続投与を開始した.経過中,腸管麻痺と多量の腹水貯留に難渋したが救命できた.第95病日には空腸の虚血性狭窄部の切除を施行した.入院時の血清分析よりプロテインS欠損症と診断された.発症3年後の現在,ワーファリンを服用しながら元気に外来通院中である.