日本消化器病学会雑誌
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長期経過観察後,塞栓術にて治療し得た門脈瘤をともなう肝内門脈肝静脈短絡の1例
田口 誠一泉 俊昌斉藤 貢玉木 雅人高見 史朗岩城 真阿部 芳道広瀬 和郎山口 明夫
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1999 年 96 巻 10 号 p. 1175-1180

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抄録

症例は70歳女性.十二指腸乳頭部癌の術前検査にて肝S6に径3cmの門脈瘤が発見されたが,無症状のため膵頭十二指腸切除術のみ施行された.術後約4年の経過を経て手指の振戦とふらつきが出現,高アンモニア血症・門脈瘤の増大・門脈肝静脈短絡血流量の増加を認めた.経皮経肝的門脈造影下に金属コイルを用い塞栓術を施行,著明な改善を得た.
 本例での門脈肝静脈短絡血流量の増加・肝性脳症の発生は肝内門脈瘤の自然経過によると考えられ,背景に慢性肝疾患を持たない肝内門脈瘤であっても定期的な経過観察が必要と考えられた.金属コイルによる経門脈的塞栓術は比較的侵襲が少なく,著明な症状の改善が得られ,門脈肝静脈短絡の有効な治療法と考えられた.パルスドプラ検査での短絡血流量の測定・門脈瘤近傍の右肝静脈波形の観察は治療効果を良く反映し,非侵襲的に繰り返し可能であり,経過観察の指標として極めて有用であった.

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