Helicobacter pylori感染胃粘膜における炎症細胞浸潤動態とケモカインの発現の関連を検討した.H.pylori陽性慢性胃炎症例の前庭部粘膜標本では,IL-8タンパク量とMPO活性,RANTESのタンパク量とその標的細胞であるメモリーTリンパ球数と好酸球数は,H.pylori陰性で組織学的にも胃炎を認めない健常例に比べて有意に高値となった.除菌後,好中球浸潤は速やかに消退し,IL-8タンパク量とMPO活性は健常例と同程度にまで減少した.一方,除菌後も単核球浸潤は残存し,RANTESの発現とメモリーTリンパ球数,好酸球数も同様に健常例に比べて有意に高値となった.以上より,H.pylori感染胃粘膜の除菌前後の炎症細胞浸潤動態とケモカインの発現は密接に関連していることが示された.