2000 年 97 巻 3 号 p. 311-318
肥満,高脂血症,糖尿病は動脈硬化を増悪させるとともに寿命を縮める要因となる.我々は,最近,肥満,糖尿病を自然発症するラットが,遺伝子異常によりCCK-A受容体を全く発現しないことを発見した.肥満,糖尿病等は中年以降に発症する生活習慣病である.それ故欠損そのものが,単独でこれらの病因になっている可能性は考えにくく,CCK-A受容体欠損という病態は生活習慣病発症の増悪因子であるのではないかということが,我々のオリジナルな仮説である.その後,大規模な疫学調査により,CCK-A受容体遺伝子多型が生活習慣病の上流に位置する肥満と有意のかかわりがあることを明らかにすることが出来た.すなわち,CCK-A受容体遺伝子プロモーター領域多型は,肥満(体脂肪増加),血清レプチン,インスリン濃度上昇,胆石症との有意の関連性が示唆された.今後,CCK-A受容体遺伝子のプロモーター領域の多型は肥満,および胆石症の早期発見,予防の一助になると期待される.