2001 年 98 巻 11 号 p. 1263-1271
同時性多発進行大腸癌31症例を対象として,臨床病理学的所見,p53遺伝子変異,p53蛋白過剰発現,DNAミスマッチ修復異常,およびKi-67抗原標識率について,単発大腸癌90症例と比較検討した.同時多発癌は年齢以外の臨床病理学的所見では,単発癌と有意差はなかったが,p53遺伝子変異とp53蛋白過剰発現の陽性率は,ともに単発癌より有意に低値を示した.また,DNAミスマッチ修復異常の頻度は,単発癌より有意に高値を示した.以上より,同時多発癌はHNPCCと同様の発癌メ力ニズムの関与が単発癌より高頻度にみられるため,術後も異時性多発癌,多臓器癌などに注意する必要があると考えられた.