日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
消化管疾患とテロメア その測定の意義と問題点
消化管の増殖と分化
田久保 海誉上西 紀夫
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2001 年 98 巻 2 号 p. 144-150

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抄録

加齢や癌を含めた疾患にともなうヒトの消化管粘膜のテロメア長の変化について記述した,食道粘膜のテロメア長は,年間60bpの短縮があり,扁平上皮癌では,非癌部よりも3~4kbp短い.胃粘膜のテロメア長の短縮は,年間47bpであり,腸上皮化生と腺癌では,有意に短縮している,腸粘膜のテロメア長の短縮は年間42~59bpであり,癌組織では非癌部よりも短い.ヒト組織を構成する細胞が更新する時間は,組織により数日から年余と大きく異なるが,テロメアの年間短縮率は約60bpを越えることは少なく,短縮率と組織の更新時間との間に直接的な関係は,薄いことが知られてきている.テロメア長の変化と,ヒトの個体の老化や癌を含めた疾患との関係については不明な点が多く,解明すべき問題点が山積しているが,テロメレースやテロメア機能の抑制による癌治療の可能性が期待されている.

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